筑波大学大学院人間総合科学研究科運動生化学研究室の征矢英昭教授と自治医科大学先端医療技術開発センター、脳機能研究部門の檀一平太准教授の共同研究グループは、光による脳機能イメージング法(光トポグラフィ)を用いて、高齢者が、短時間の中強度運動をおこなった直後に、自分の注意や行動をコントロールする脳の働きである高次認知機能、「実行機能」が向上することを実証しました。運動による実行機能の向上に関与する脳部位は、若齢成人では左脳の前頭前野外背側部でしたが、高齢者では、右脳の前頭前野の一部、右前頭極であることを明らかにしました。
これまで、習慣的な中強度運動が認知機能を向上させることが報告されてきましたが、中強度運動の短期的な効果は未解明でした。最近我々は、中強度運動が短期的に若齢成人の認知機能を向上させる際に、左前頭前野背外側部が関わることを明らかにしました。本研究ではその成果を発展させ、短時間の中強度運動が高齢者の認知機能を高めること、そして、その機能向上には加齢による脳機能低下を防ぐための右前頭極における代償機能の向上が関与していることを世界で初めて明らかにしました。本結果は、短時間の運動は脳機能が低下した高齢者においても脳の認知機能向上に効果的であることを示しています。これは、身体機能のみならず、認知機能向上を狙いとした運動処方確立に寄与できる画期的な成果です。
本研究成果は、米国の科学雑誌「Neurobiology of Aging (ニューロバイオロジー・オブ・エイジング) 」 オンライン版 (2月1日付け)に掲載されました。