toppage認知脳科学研究成果「脳の刺激が脳を育む」Neuronal Activity Drives Localized Blood-Brain-Barrier Transport of Serum Insulin-like Growth Factor-I into the CNS:Neuron電子版9/9号掲載

研究成果「脳の刺激が脳を育む」Neuronal Activity Drives Localized Blood-Brain-Barrier Transport of Serum Insulin-like Growth Factor-I into the CNS:Neuron電子版9/9号掲載

筑波大学大学院人間総合科学研究科の征矢英昭教授、首都大学東京大学院人間健康科学研究科(行動生理学) 西島 壮 助教、カハール研究所(スペイン)のIgnacio Torres-Aleman教授の共同研究グループは、神経活動が高まった脳部位に血液中のインスリン様成長因子(IGF-I)が取り込まれることを動物実験で実証し、その分子メカニズムの一端を明らかにしました。これまで、多様な神経保護効果をもつIGF-Iが血液中から脳内に移行することは知られていましたが、血液と脳の間にはホルモンが自由に通過できない関所「血液脳関門」があり、
IGF-Iが血液脳関門を実際に通過するかは不明でした。本研究はヒト由来のIGF-Iをラットの血液中に投与し、神経活動の高まった脳部位でこのIGF-Iが増加したことから、神経活動の活性化が引き金となって血液中のIGF-Iが血液脳関門を通過することを世界で初めて実証しました。さらにその調節には、神経活動の活性化に伴う局所脳血流量の増加と、グリア細胞からシグナル分子の放出、そしてマトリックスメタロプロテアーゼ9の活性化が関与していることが明らかとなりました。
豊かな環境や運動、そして学習活動を通じて脳を活性化させることが脳機能の維持に重要であると示唆されていますが、本研究の結果は、神経活動の活性化によって血液中IGF-Iが脳内に移行して作用することが脳機能の維持に貢献していることを示しています。そして、血液中IGF-Iの脳内への移行は、活動する神経細胞と隣り合うグリア細胞が連携し、様々な分子によって巧みに調節されていることが明らかとなりました。我々はこの調節機構を“Neuro-Trophic Coupling”と名付けました。この概念は今後、IGF-I以外のホルモンも応用され、脳機能を維持する重要な調節機構として発展することが期待されます。
本研究成果は、米国の科学雑誌「Neuron(ニューロン)」電子版(9月9日付け)に掲載されました。

Neuron電子版
http://www.cell.com/neuron/abstract/S0896-6273(10)00617-3

各種メディア
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100911-OYT1T00322.htm?from=nwlb
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20100913-OYT8T00117.htm
http://www.47news.jp/CN/201009/CN2010091101000036.html

2010-09-13

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