toppage認知脳科学
征矢英昭教授(筑波大学人間総合科学研究科)指導の人間総合科学研究科(博士後期課程)体育科学専攻1年イ ミンチョル氏は,2010(平成22)年11月13日~17日,アメリカ合衆国サンディエゴ(San Diego)で開催された Neuroscience 2010,40th Annual Meeting において“Loaded wheel running enhance BDNF function in the rat hippocampus”と題する研究発表を行いましたが,その内容が,2011(平成23)年1月19日の The New York Times のコラムに“Phys Ed: Brains and Brawn”と題して紹介されました。
The New York Times は,100年以上の歴史を持つ,全世界で読まれる最も著名な雑誌の一つです。特に,コラム欄の記事は話題を呼ぶことで知られており,とりわけ健康欄はダイエットやメタボ予防に関する新知見で賑わいをみせています。最近,脳科学の進歩もあり,運動と脳に関する知見も増えてきましたが,今回は,脳機能を高める新しい運動条件の提案という点で掲載されました。
イ氏の発表内容は,ラットに,体重の3割に相当する負荷をかけたランニング運動が,通常の負荷なしランニング運動よりも,運動量を半分程度減少させるものの,仕事量を顕著に増加させ,認知機能の向上や神経新生に関わる海馬内のBDNFの発現と作用を高めることを見いだしたものです。これは,筋力トレーニングで認知機能が高まる可能性を初めて示唆したもので,その内容の斬新さと有用性が評価されたことによるものです。(受賞日:2011.01.19)
関連リンク
The New York Times 掲載記事 “Phys Ed: Brains and Brawn”
http://well.blogs.nytimes.com/2011/01/19/phys-ed-brains-and-brawn/?emc=eta1
筑波大学HP
http://www.tsukuba.ac.jp/update/awards/20110125155728.html
テレビ東京 夜11時より放映中のビジネス情報番組『ワールドビジネスサテライト』において、平成23年1月10日OAの特集「若い」のヒケツのなかで、征矢英昭教授の「軽運動と脳活性」に関する研究が紹介されました。
ワールドビジネスサテライト
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/feature/post_141
第8回身心統合科学(BAMIS)セミナー
運動による脳神経可塑性と分子基盤
日時: 11月19日 15:00~18:00
会場: 5C406
講師: Ignacio Torres教授(カハール研究所)
講演タイトル:The role of IGF-I in neuroprotection by physical exercise
第7回身心統合科学(BAMIS)セミナー
運動時の自律神経を介した体温調節
日時: 11月18日 16:00~19:00
会場: 5C606
講師: Glen Kenny教授(オタワ大学)
講演タイトル:Human Thermoregulation: separating thermal and non-thermal effects on whole-body heat loss
心豊かな老後のための体づくり 中
「認知症予防にはスロージョギング!」で認知脳科学分野、征矢英昭教授の研究成果が紹介されています。
征矢英昭教授指導の人間総合科学研究科(博士後期課程)体育科学専攻2年松井崇氏(日本学術振興会特別研究員)は,2010(平成22)年9月16日~18日,千葉商科大学(千葉県市川市)で開催された第65回日本体力医学会大会において「脳でも起こる運動後のグリコゲン超回復」と題した発表により,大会最終日の18日,若手研究者奨励賞を受賞し,賞状と副賞の授与を受けました。この賞は大会の一般発表において,優秀かつ将来性のある研究発表者10人程度に授与されるものです。
http://www.tsukuba.ac.jp/update/awards/20100922195424.html
運動や学習などで刺激を受けた脳の部位に、神経保護作用のあるホルモンが血液中から取り込まれる仕組みを、征矢英昭筑波大教授、西島壮首都大学東京助教と、スペイン研究機関のグループが解明した。
脳の活性化が脳機能を維持し、はぐくむことを分子レベルで証明。アルツハイマー病の予防などにつながると期待される。
IGF1と呼ばれるこのホルモンは主に肝臓でつくられ、脳神経系では血管の成長や神経細胞をつくる作用がある。血液中から脳内に運ばれることは知られていたが、ホルモンが自由に通過できない「血液脳関門」と呼ばれる防御システムをどうくぐり抜けるのか不明だった。
研究グループは、ラットの血液にIGF1を投与した後、ひげを刺激し、関係する大脳皮質を活性化させる実験を行い、活性化した部位ではIGF1が増えたことを確認した。
IGF1はほかのタンパク質と結合して巨大な分子を構成しているが、神経の活動が活発になると、血管に付着する酵素の一種が活性化してこの巨大分子を分解。IGF1が血液脳関門を通過するのを助けることを突き止めた
2010/09/11/06:05 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201009/CN2010091101000036.html
細胞の成長や保護に重要な栄養素となるホルモンが、脳の活動が活発な部分だけに血液中から取り込まれることを、征矢(そや)英昭・筑波大教授と西島壮(たけし)・首都大学東京助教らのグループが発見した。
脳機能を維持するのに学習や運動などが不可欠であることを実証したもので、将来、認知症予防など脳を健康に保つためのプログラム開発につながると期待される。科学誌ニューロン最新号に掲載された。
グループは、筋肉の新生や機能の維持に重要な役割を持つホルモン「IGF―1」が脳神経にも作用することに注目。しかし、血管と脳の間には「血液脳関門」という関所があり、このホルモンが脳に取り込まれる仕組みは謎だった。
ラットの実験で、ヒゲを刺激すると神経活動が活発になる脳の部分だけに、血中からIGF―1が移動することを確認。神経活動が高まり、脳の血流量が増えることが引き金となり、特殊な酵素がIGF―1の分子を小さくして、脳の関所を通りやすくすることも突き止めた。
征矢教授は「脳の神経活動そのものが強力な栄養素を取り込み、さらに脳機能が強化される好循環を生む」としている。
(2010年9月13日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20100913-OYT8T00117.htm
細胞の成長や保護に重要な栄養素となるホルモンが、脳の活動が活発な部分だけに血液中から取り込まれることを、征矢(そや)英昭・筑波大教授と西島壮(たけし)・首都大学東京助教らのグループが発見した。
脳機能を維持するのに学習や運動などが不可欠であることを実証したもので、将来、認知症予防など脳を健康に保つためのプログラム開発につながると期待される。科学誌ニューロン最新号に掲載された。グループは、筋肉の新生や機能の維持に重要な役割を持つホルモン「IGF―1」が脳神経にも作用することに注目。しかし、血管と脳の間には「血液脳関門」という関所があり、このホルモンが脳に取り込まれる仕組みは謎だった。
ラットの実験で、ヒゲを刺激すると神経活動が活発になる脳の部分だけに、血中からIGF―1が移動することを確認。神経活動が高まり、脳の血流量が増えることが引き金となり、特殊な酵素がIGF―1の分子を小さくして、脳の関所を通りやすくすることも突き止めた。征矢教授は「脳の神経活動そのものが強力な栄養素を取り込み、さらに脳機能が強化される好循環を生む」としている。
(2010年9月11日14時15分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100911-OYT1T00322.htm
筑波大学大学院人間総合科学研究科の征矢英昭教授、首都大学東京大学院人間健康科学研究科(行動生理学) 西島 壮 助教、カハール研究所(スペイン)のIgnacio Torres-Aleman教授の共同研究グループは、神経活動が高まった脳部位に血液中のインスリン様成長因子(IGF-I)が取り込まれることを動物実験で実証し、その分子メカニズムの一端を明らかにしました。これまで、多様な神経保護効果をもつIGF-Iが血液中から脳内に移行することは知られていましたが、血液と脳の間にはホルモンが自由に通過できない関所「血液脳関門」があり、
IGF-Iが血液脳関門を実際に通過するかは不明でした。本研究はヒト由来のIGF-Iをラットの血液中に投与し、神経活動の高まった脳部位でこのIGF-Iが増加したことから、神経活動の活性化が引き金となって血液中のIGF-Iが血液脳関門を通過することを世界で初めて実証しました。さらにその調節には、神経活動の活性化に伴う局所脳血流量の増加と、グリア細胞からシグナル分子の放出、そしてマトリックスメタロプロテアーゼ9の活性化が関与していることが明らかとなりました。
豊かな環境や運動、そして学習活動を通じて脳を活性化させることが脳機能の維持に重要であると示唆されていますが、本研究の結果は、神経活動の活性化によって血液中IGF-Iが脳内に移行して作用することが脳機能の維持に貢献していることを示しています。そして、血液中IGF-Iの脳内への移行は、活動する神経細胞と隣り合うグリア細胞が連携し、様々な分子によって巧みに調節されていることが明らかとなりました。我々はこの調節機構を“Neuro-Trophic Coupling”と名付けました。この概念は今後、IGF-I以外のホルモンも応用され、脳機能を維持する重要な調節機構として発展することが期待されます。
本研究成果は、米国の科学雑誌「Neuron(ニューロン)」電子版(9月9日付け)に掲載されました。
Neuron電子版
http://www.cell.com/neuron/abstract/S0896-6273(10)00617-3
各種メディア
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100911-OYT1T00322.htm?from=nwlb
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20100913-OYT8T00117.htm
http://www.47news.jp/CN/201009/CN2010091101000036.html